2021年2月10日水曜日

エミリー・ディキンスン論が掲載されました

 『英文学研究 支部統合号(『関東英文学研究)』(vol. 13, 2021, pp. 79-87 [pp.29-37])に“Nature’s Dining Room”: Emily Dickinson’s Multispecies Imaginationが掲載されました。

2015年に科研費「動物殺しの比較民族誌研究」(研究代表者:奥野克巳先生)の研究会で刺激を受け、その後、「マルチ・スピーシーズ」の概念をアメリカ詩の読解に活かすことはできないかと考えてきました。内容はニュー・マテリアリズムやラトゥールのアクター・ネットワーク理論の見地を下敷きにしていますが、私の議論そのものは、あまり斬新なものではないという自覚はあって、19世紀半ばにおけるキリスト教的自然観と存在論的自然観の相克を、詩作品の中の鳥(とりわけrobin)の表象に読みとるという内容になっています。理論・方法論については次回以降の論文で彫琢させていきたいと思っています。

ディキンスンへの思いは、大学院時代に渡辺信二先生の授業で育まれていて、いつか論文を書きたいとおもっていましたが、なかなか時間がつくれずにいました。そこへ一昨年、日本ソロー学会からの依頼で江田孝臣『エミリ・ディキンスンを理詰めで読む−−新たな詩人像をもとめて』の書評を担当させていただく機会に恵まれ、詩集の再読を進めていました。

さらに、2020年4月にコロナ禍のアメリカで、予定していた共同研究や学会参加、フィールドワークをすべてキャンセルしぜるをえなくなり、ステイ・ホームを余儀なくされました。そのくやしさをバネに集中的に関連論文を読んで完成させたのが、この論文です。査読の過程では、編集委員の先生方にかなり有益かつ励ましのコメントをいただき、今後にもつながる気づきを賜りました。そうした意味でも、私にとっては思い入れの深い論文です。

J-Stageを通じたオープン・アクセスまでは時間を要するので、日本英文学会会員以外でご興味をもってくださった方には、抜刷のコピーを添付メールいたします。ウェブサイト下部のコンタクト・フォームからご連絡ください。