一橋大学での研究会One-day Forum "C. L. R. James Today、"に大西とし君を誘って参加。大変勉強になる機会をつくってくださった中井亜佐子先生、科研プロジェクトの方々に深く感謝申し上げます。
トリニダード・トバゴ出身の英国作家ジェイムズがメルヴィルを論じる契機となったのは、どのような思想的、歴史的な背景があったのか。
吉田裕先生のプリズンライティングとして読むMariners, Renegades, and Castawaysは、その問いに向かっていく論考でとても勉強になった。吉田さんは1960年代以降の英国の言説を念頭におかれていたが、アメリカ文学史の文脈で私は刺激を受けた。そういうオーディエンスの「我田引水的」な聴き方が許されるのもトランスアトランティックな研究会の美点であろう。
ジェイムズのプリズンライティングは、アメリカで連綿とした系譜のある捕囚ナラティブにも接続するだろうか。あるいはメルヴィルやソローが描いた投獄の意味を転覆させる超越主義的な抵抗の身ぶりとも共鳴するのではないか。
またトランスアトランティック・モダニズムに関していえば、いわゆるメルヴィル・リヴァイヴァルと呼ばれるメルヴィル再評価が1920年代のモダニズム期に、しかもイギリスを震源地としていた事実がある。
それに加え、1941年にはアメリカにおいて共産主義思想と同性愛という、言わば暗喩的な「牢獄」を生きたマシーセンによって、アメリカンルネサンスの作家としてその名を刻まれたメルヴィルが、1951年にCRLジェイムズによって『白鯨』が論じられるにいたったことを、牢獄のイメージで繋ぐ試みも可能であろう。
戦争、暴力、革命という観点から、「トランス・センチュリー」という批評的視座を目指すにあたって、ジェイムズとメルヴィルを併読してみたい。
ところで、英文学系の先生方ばかりで懇親会は遠慮したが、大西くんは熱く誘われていたので是非参加するようにと促した。早速連絡交換をしていたし、よい出会い、よい繋がりとなれば先輩としては誘った甲斐があるというものだ。こうしたトランスアトランティックな視点でのアメリカ文学からの取り組みとして、ここ数年、すばらしい成果を出している九州方面からの『環大西洋の想像力』があるのだし、ますます勉強不足を痛感しながら、古典と批評の大海原へと航海せねば。
http://gensha.hit-u.ac.jp/research/TransA/symposium20150111.html
主催: 科研費基盤(B)プロジェクト「モダニズムの越境性/地域性――近代の時空間の再検討」(研究代表者:中井亜佐子)
"History and Life-Writing: Translating Paul Buhle's C. L. R. James"(中井亜佐子 一橋大学)
Masashi Hoshino(星野真志 一橋大学)
"Through Englishness to World Revolution: C. L. R. James and George Orwell"
Yutaka Yoshida(吉田裕 東京理科大学)
"Revisiting Mariners, Renegades, and Castaways as Prison Writing"
Discussant:
Ted Motohashi(本橋哲也 東京経済大学)
トリニダード・トバゴ出身の英国作家ジェイムズがメルヴィルを論じる契機となったのは、どのような思想的、歴史的な背景があったのか。
吉田裕先生のプリズンライティングとして読むMariners, Renegades, and Castawaysは、その問いに向かっていく論考でとても勉強になった。吉田さんは1960年代以降の英国の言説を念頭におかれていたが、アメリカ文学史の文脈で私は刺激を受けた。そういうオーディエンスの「我田引水的」な聴き方が許されるのもトランスアトランティックな研究会の美点であろう。
ジェイムズのプリズンライティングは、アメリカで連綿とした系譜のある捕囚ナラティブにも接続するだろうか。あるいはメルヴィルやソローが描いた投獄の意味を転覆させる超越主義的な抵抗の身ぶりとも共鳴するのではないか。
またトランスアトランティック・モダニズムに関していえば、いわゆるメルヴィル・リヴァイヴァルと呼ばれるメルヴィル再評価が1920年代のモダニズム期に、しかもイギリスを震源地としていた事実がある。
それに加え、1941年にはアメリカにおいて共産主義思想と同性愛という、言わば暗喩的な「牢獄」を生きたマシーセンによって、アメリカンルネサンスの作家としてその名を刻まれたメルヴィルが、1951年にCRLジェイムズによって『白鯨』が論じられるにいたったことを、牢獄のイメージで繋ぐ試みも可能であろう。
戦争、暴力、革命という観点から、「トランス・センチュリー」という批評的視座を目指すにあたって、ジェイムズとメルヴィルを併読してみたい。
ところで、英文学系の先生方ばかりで懇親会は遠慮したが、大西くんは熱く誘われていたので是非参加するようにと促した。早速連絡交換をしていたし、よい出会い、よい繋がりとなれば先輩としては誘った甲斐があるというものだ。こうしたトランスアトランティックな視点でのアメリカ文学からの取り組みとして、ここ数年、すばらしい成果を出している九州方面からの『環大西洋の想像力』があるのだし、ますます勉強不足を痛感しながら、古典と批評の大海原へと航海せねば。
http://gensha.hit-u.ac.jp/research/TransA/symposium20150111.html
主催: 科研費基盤(B)プロジェクト「モダニズムの越境性/地域性――近代の時空間の再検討」(研究代表者:中井亜佐子)
"History and Life-Writing: Translating Paul Buhle's C. L. R. James"(中井亜佐子 一橋大学)
Masashi Hoshino(星野真志 一橋大学)
"Through Englishness to World Revolution: C. L. R. James and George Orwell"
Yutaka Yoshida(吉田裕 東京理科大学)
"Revisiting Mariners, Renegades, and Castaways as Prison Writing"
Discussant:
Ted Motohashi(本橋哲也 東京経済大学)